正しい睡眠は万病を防ぐ 9月3日は「睡眠の日」

今月3日は「秋の睡眠の日」。健康のベースとなる睡眠への意識を高めるため、日本睡眠学会と睡眠健康推進機構が3月18日との年2回制定しました。そこで日本睡眠学会の理事長として「健康日本21・第三次(健康づくりのための睡眠ガイド2023)」(厚生労働省)の作成に携わった内村直尚・久留米大学長に、改めて「正しい睡眠」の重要性について解説してもらいました。

話を伺ったのは?

久留米大学長
内村直尚氏

内村直尚・久留米大学長

医学博士。1956年生まれ、福岡県出身。久留米大大学院医学研究科修了。87~89年に米・オレゴン健康科学大に留学。2007年、久留米大医学部神経精神医学講座教授に就任。同大病院副病院長、同大高次脳疾患研究所長、同大医学部長、同大副学長を歴任して20年から現職。21年に日本睡眠学会の理事長に就任。

目次

「質」起床時の休息感「量」適正な睡眠時間

日本人の平均寿命は男性が81歳、女性は87歳です。一方で健康寿命は男性が73歳、女性は75歳。男性で8年、女性で12年も平均寿命と健康寿命の差があります。その差を近づけるためには「正しい睡眠」が不可欠です。朝の起床時にぐっすりと寝た休息感を得られるのが「質」で、適正な睡眠時間が「量」。質量ともに正しい睡眠は高血圧、心臓病、糖尿病、がん、認知症など、多くの疾患の予防につながります。

不足でも過多でも疾患リスクが上昇

1日の睡眠時間と疾患との関係は、さまざまな研究データで示されています。

糖尿病
7〜8時間の人に比べて、5時間未満の人は2.5倍、6時間の人でも1.7倍も発症リスクが高まります。9時間以上でも1.8倍です。

肥満
5時間を切ると肥満を招きます。睡眠が不足すると甘みに鈍感になります。また、満腹を感じるホルモンが低下する一方で、空腹を感じるホルモンが増えます。より甘い物を求め、空腹感が強くなるために体重が増えてしまうのです。食事のコントロールと適度な運動ができていても肥満になり、糖尿病や高血圧のほか、コレステロールが上がって心筋梗塞や脳血管障害を起こしやすくなります。

がん

とくに女性の乳がん、男性の前立腺がんは睡眠不足によって増加することが分かっています。

免疫力
7時間の人に比べ、5時間未満の人は4.5倍も風邪をひきやすくなります。睡眠不足は免疫力を低下させ、インフルエンザや新型コロナにも感染しやすくなります。

認知症
福岡県久山町での疫学調査の結果、最も認知症になりにくくて死亡率も低かったのは5時間から6.9時間の人でした。5時間未満の人は認知症に約3倍もなりやすく、8時間以上の人も認知症になりやすかったのです。

うつ
6時間から8時間ぐらいの人は程度が軽く、5時間を切ると重症になります。9時間を超えても重症化します。

死亡リスク
男女ともに最もリスクが低いのは6.5時間から7.4時間の人でした。5時間を切る人、9時間以上の人は非常にリスクが高まります。

シニアは8時間以上床で過ごさないこと

こうした多くのデータを基に作成した「健康づくりのための睡眠ガイド2023」で、20〜59歳の適正な睡眠時間は6〜9時間としました。とくに40〜59歳の人は5.5時間未満だと死亡リスクが上昇し、かつ起床時に休息感がなければより高まります。
 
60歳以上は6〜8時間です。眠っていなくても、床に就いている時間が8時間以上だと死亡リスクが高まります。それでも起床時に休息感を得られている人のリスクはさほど上がりませんが、感じない人は顕著に上がります。

まずは、20〜59歳は6時間以上の睡眠時間を確保すること。60歳以上は8時間以上、床で過ごさないこと。それが健康で長生きするコツです。

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この記事を書いた人

脳活、運動、食事、睡眠、社会参加、脳トレなどの普及・啓発活動による健康寿命の延伸・認知症予防の実現を目指す「脳活新聞」

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