【生活習慣病予防】運動不足はなぜ悪い?解消方法や運動量の目安とは…

「運動不足はなぜ健康に悪いの?」「運動が生活習慣病の予防になるってホント?」
久留米大人間健康学部スポーツ医科学科の教授で、循環器内科の専門ドクターの榎本美佳氏に解説してもらいました。
運動不足解消のポイントや、運動量の目安とは…自宅でできる簡単な運動も、健康長寿へと導いてくれそうです。

話を伺ったのは?

久留米大人間健康学部スポーツ医科学科
榎本美佳教授

久留米大人間健康学部スポーツ医科学科の教授で、循環器内科の専門ドクターの榎本美佳氏

1996年久留米大医学部を卒業し、同大医学部内科学講座心臓・血管内科部門に入局。2007年に医学博士。2024年から現職。同講座で60年以上続いている田主丸検診を2002年から行い循環器病予防を目的とする疫学研究と、同大病院循環器病センターで外来診療も継続中。

目次

身体活動量と座位時間に注意を

日本人の死因のトップは悪性新生物(がん)です。以下は心疾患、老衰、脳血管疾患、肺炎と続きます。これらのほとんどが動脈硬化に起因する病です。

また、全世界での死亡に関する危険因子の1番目は高血圧で、以下は喫煙、高血糖と続きます。その4番目に挙げられているのが身体不活動で、5番目が過体重・肥満です。動かないことは死亡の原因となるのです。

動脈硬化を進行させる生活習慣病を予防し、健康を保持、増進する。そのためには“栄養をとる”“体を動かす”のどちらかだけではなく、エネルギーの収支バランスを適切に保たなければいけません。

熱心に話を聞く 「脳活健康大学」 参加者


では、体を動かすのは健康にとって本当に良く、動かさないのは本当に悪いのでしょうか。

米国の身体活動量に関する調査・研究で、よく動いている人は動かない人に比べて22%も死亡率が低いことが分かりました。また、座っている時間(座位時間)が長い人は、とくに男性で約30%も死亡率が高いという結果も出ました。

久留米大は田主丸町(福岡県久留米市)で1958年から10年ごとに栄養調査や採血、心電図や各種エコー検査などを行ってきました。この研究の中で1999年に受診した住民1920人を18年間にわたって追跡調査した結果、やはり日常生活で身体活動量が多い人ほど、また座位時間が短い人ほど、長生きだと分かりました。

高強度でなくても運動で長生きに

「中等度の運動でも死亡リスクが下がることが分かりました」と榎本氏

また、米国では運動量と死亡との関係を探る大規模な研究が行われました。13年間、6万2178人を対象とした追跡調査です。
その結果、週に2時間の歩行をする人に比べて、運動しない人は26%も死亡リスクが高くなるということが分かりました。
ただし、運動をすればするほどリスクが下がるわけでもありません。もちろん高強度の運動をしていた方がより長生きではありますが、中等度でもリスクが下がることが、この論文から読み取れます。

シニアへの推奨は1日6000歩

日本では身体活動量と総死亡や生活習慣病、がん、認知症などを患う危険度がどう関係しているかを見たデータを厚生労働省が発表しています。これによるとあまり動いていない人に対し、よく動く人は21%も危険度が下がっています。例えば毎日60分の歩行をする人は、運動しない人に比べて17%も危険度を減らせます。

また、座位時間が1日約2時間の人に比べ、4時間、7時間と長くなるにつれて危険度が増し、12時間の人は24%も高くなっています。
ちなみに日本の成人の座位時間は他国に比べて非常に長く、男女とも1日6時間以上の人が50%以上います。

厚生労働省は「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」を発表しており、成人は1日60分以上、高齢者(65歳以上)は1日40分以上の身体活動を推奨しています。これを歩行で表すと、成人は1日8000歩以上、高齢者は同6000歩以上です。
もっと健康寿命を延伸したいのであれば、筋力トレーニングや他のスポーツをプラスする方がいいでしょう。また、週に1日だけ頑張っても筋肉は付かないので、毎日ではなくても週3日は運動する方がお勧めではあります。

ただし、天候や体調によって運動できない日もあるものです。無理をせずにできるだけ歩き、それと同時に座位時間を少なくすること。例えばテレビを見ていてもCMの間には立つ、または30分座ったら立って足踏みをするなど、1日10分間の運動を日常に加える。その積み重ねに効果があるのです。

自分の活動量を知ろう

身体活動量の評価法の一つに「メッツ」という数値を用いた方法があります。メッツは運動強度を表し、1メッツは安静な状態で1分間に消費する酸素量を基準としています。
立っているのは2メッツ、通常の歩行は3メッツ、ランニングは8メッツなど、厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」には、いろいろな運動や生活活動のメッツ数が細かく示されている。ガイドは同省のホームページにも掲載されています。

あなたの1週間の活動量は?

1回につき少なくとも10分間以上続けて行った身体活動についてのみお答えください。

国際標準化身体活動質問票より
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この記事を書いた人

脳活、運動、食事、睡眠、社会参加、脳トレなどの普及・啓発活動による健康寿命の延伸・認知症予防の実現を目指す「脳活新聞」

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