適度な運動は健康寿命の延伸に効果的だと分かっていても、黙々と励む運動はなかなか続かないもの。だが、スポーツ性のある運動であれば楽しみながら活動量を維持・向上できそうです。久留米大人間健康学部スポーツ医科学科の行實鉄平准教授が推奨するのが「創(つく)る」スポーツ。その一つとして、新聞紙を利用した運動遊びを紹介してもらいました。まだまだ酷暑が続きそうな今夏のフレイル予防にも一役買ってくれそうです。
※西日本新聞TNC文化サークル久留米教室の講座「脳活健康大学」を採録し、抜粋・構成
話を伺ったのは?
久留米大人間健康学部スポーツ医科学科
行實鉄平准教授
福岡県春日市出身。筑波大大学院から徳島大の講師を経て2017年に久留米大人間健康学部へ。専門はスポーツ経営学、コミュニティスポーツ論。日本体育・スポーツ経営学会常任理事、日本スポーツ協会(日本スポーツ少年団リーダー養成ワーキンググループ班員および活動開発部会)委員、公益財団法人福岡県スポーツ振興センター(アクシオン福岡)理事などを務める。
目次
みんなが参加できるユニバーサルスポーツ
スポーツは、できる人、上手な人、特別な人たちが「する」ものという感覚があるかもしれません。しかし、「見る」のもスポーツ活動の一つ。また、大会をボランティアなどで「支える」のも一つです。そして「創る」。そのようにスポーツの楽しみ方を広げた時、多くの人のアクティブな生活を創造できます。
わが国では1961年にできたスポーツ振興法が、2011年にスポーツ基本法へと改正されました。ここにスポーツを行うのは基本的な人権の一つとして位置付けられています。また、スポーツへの関わりとして「する」「見る」「支える」だけではなく「創る」の積極的な普及も掲げられています。
例えば、パラリンピックの競技には、重度の障害者も参加できるボッチャや、視覚障害者がプレーするゴールボールがあります。これらは独自に開発された競技です。既存のスポーツに合わせるのではなく、自分たちができるスポーツを創る。この創るという発想は「ユニバーサルスポーツ」の実現に大切な考え方になります。
皆さんもご存知かと思いますが「ユニバーサルデザイン」という言葉があります。「バリアフリー」は、障害のある人を中心に据えた環境づくりといえます。建物の玄関にスロープを作り、車いすで出入りできるようにするのはバリアフリー。一方でユニバーサルデザインは、スロープだけでなく階段も設け、健常者の不便にも配慮します。
同じように、工夫を凝らしてさまざまな人々が参加できるようにしたのがユニバーサルスポーツです。大人でも子どもでも、高齢であっても、また障害があっても、みんなが一緒に参加できる。競技性が強くて元気な若い人を中心とした一般的なスポーツよりも、もっと気軽に楽しめるスポーツ。それをみんなで創っていくことを目指したスポーツです。
新聞紙を使ってスポーツを創る
JSPO(日本スポーツ協会)は子どもの運動遊びのプログラムを普及していて、この中には皆さんが昔やっていた運動遊びが多くあります。昔の運動遊びの良さは、集まったメンバーによって難しくしたり簡単にしたり、どんどんルールを変えていけるところ。つまり、創るスポーツであることです。
その中にある新聞紙を使ったプログラム(運動遊び)を紹介します。使う新聞紙は基本的に見開き1枚分です。これを広げたり縮めたりして使います。
「新聞じゃんけん」は、まず最も大きく広げた新聞紙の上に立ち、じゃんけんで負けるたびに半分に折っていきます。最後まで新聞紙の上に立っていた人の勝ちです。
新聞紙の縁をくしゃくしゃと丸めるとフライングディスク(フリスビー)ができます。横投げで真っすぐ投げられるか。さらに、その真ん中を破ってドーナツ状のリングを作ります。相手が投げたリングに腕を通してキャッチするのも面白いでしょう。また、数枚の新聞紙を丸めてボールを作り「お座りバレー」で競い合うのも楽しいです。
JSPOのホームページには、ほかにもたくさんの運動遊びが紹介されています。これを参考に、家族や仲間でワイワイがやがやと楽しんでください。
新聞紙でもいろいろなことができるように、難しいことではなく、楽しく簡単なスポーツを創り、育む。そんな活動を自宅はもちろん、さまざまな場所でやって、健康維持につなげていただきたいと思います。
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