【トイレ悩み改善策】侮れない夜間頻尿 まずは「水分摂取の工夫」を

我慢できない、思わず漏らした、まだ残っている感覚が…。シニアの生活の悩みで多く聞かれるのが排尿に関するさまざまな問題。特に悩みの声が大きいのが夜間頻尿です。そこで久留米大医療センター泌尿器科で治療や研究に当たっている医学博士・末金茂高教授の講座「知って得する、おしっこトラブル」の中から、その改善方法を取り上げます。

話を伺ったのは?

久留米大医療センター副院長
末金茂
教授

久留米大医療センター副院長・末金茂高氏

医学博士(泌尿器科学)。久留米大医療センター副院長・教授。1991年に久留米大医学部医学科を卒業し、同泌尿器科学講座に入局。済生会大牟田病院泌尿器科医長や米国・ハーバード大医学部ダナファーバーがん研究所への留学などを経て、今年から現職。所属学会は日本泌尿器科学会(代議員・指導医・専門医)、日本透析医学会(認定医)など。

目次

生活の質が低下 死亡リスクも上昇

夜の入眠から朝の起床までに1回でもトイレに起きたら夜間頻尿で、生活の質の低下に強く関与します。生活に影響する症状として昼間頻尿、尿勢低下、尿意切迫感、切迫性尿失禁、腹圧性尿失禁などもありますが、圧倒的に夜間頻尿が多いのです。

年齢とともに夜間にトイレに起きる頻度は増え、80歳以上の男性は2回以上の人が約8割もいます。夜間頻尿のある人は、ない人に比べると骨折による入院の割合がほぼ倍増します。夜中にトイレに行き、転倒するのです。死亡率も2倍以上になるというデータがあります。要介護となる率や、うつ病になる率も高まります。夜間頻尿は侮れません。2回以上であればしっかりと治療しなければいけません。

原因には睡眠障害、過活動膀胱(ぼうこう)、前立腺肥大症、高血圧、薬剤や水分の過剰摂取などが挙げられます。これらが複雑に絡み合うので、その一つ一つに対応していく必要があります。

「夜間頻尿は侮れません」と末金氏

「夜間多尿」改善へ 夕食後の水分に注意

睡眠との関連では、就寝から1回目の排尿までの時間に注意が必要です。睡眠には約1時間半ごとの周期があり、最初が深く、そこから次第に浅くなっていきます。眠りの深い良質な睡眠を取れるのは最初の3時間です。この3時間を1回目の排尿で途切れさせないことが大事なのです。

しかし、回数が増えると1回目までの時間も短くなることが分かっています。そこで気を付けたいのが水分の過剰摂取です。水分を多く取ると作られる尿の量が多くなり、排尿回数も増えます。特に男性の夜間頻尿の原因の約7割は夜間の尿量が多い「夜間多尿」で、そこに関与するのが水分過多です。

「知って得する、おしっこトラブル」講座の様子

では、1日にどれくらいの水分が適量か。その一つの目安が体重当たり20〜25mlです。例えば体重が50kgの人は1日に1〜1.2l。このうち食事から約6割は水分が入るので、プラス400〜500mlの飲水が適量でしょう。そう考えると、水分を取り過ぎている人がいるかもしれません。

しばしば脳卒中などの予防に水分を取れという話を耳にするでしょうが、実は水分を多く摂取することで脳梗塞を予防できるというエビデンスはありません。もちろん熱中症や脱水症状を防ぐなど水分は必要ですから、取るな、飲むなとは言いません。朝の起床から昼過ぎまでにしっかり取り、夕食後は少し控えて1回当たりの量も減らすなど、やれることから徐々にやってみる。そうした工夫だけでも夜間多尿は改善します。

夜間頻尿の改善方法について解説

時刻と尿量を記録 排尿日誌から診断

また、「排尿日誌」を付けてほしいと思います。これは就寝と起床の時刻、その日の排尿した時刻と量を記録する日誌です。起きて最初の尿は夜間に作られた尿なので、就寝後の夜間尿量に合算します。1日の総量のうち、夜間尿量が33.3%以上だと夜間多尿です。この日誌から1日の量が多い多尿や、機能的膀胱容量の低下など他の診断もできます。

日誌は医療機関などのホームページに掲載されています。尿量は目盛り付きの計量コップで量るほか、あらかじめ「これぐらいなら何ml」と把握してペットボトルなどを代用する方法もあります。

夜間頻尿を改善するためには適切な水分摂取の他にも、しっかりとした行動療法が必要です。寝る前のアルコールやカフェインの摂取は避けましょう。塩分制限、食事(ダイエット)や禁煙、運動など。日光を浴びるとメラトニンという睡眠のリズムをつかさどるホルモンが分泌されるため、夕食前の日光を浴びながらの散歩などをお勧めします。

また、ふくらはぎに水分がたまるので、脚を上げて30分以内の昼寝をする。診察で話を聞くと、昼間にうたた寝をしている人が多くいます。夜間にぐっすり眠るためには、うたた寝の我慢も効果があります。弾性ストッキングの着用も効果があるでしょう。そうした行動療法に加えて、薬物療法も行えます。

排尿トラブルもいろいろな治療法が出てきています。さまざまな方法を組み合わせて治療し、皆さんが日々を快適に過ごす一助になればと思います。

尿トラブル解消に効果大の「骨盤底筋体操」
尿トラブルの主な原因となるのが過活動膀胱です。膀胱が必要以上に過敏に活動して頻尿が起き、突然の尿意を我慢できずに尿を漏らすこともあります。
その治療の行動療法の一つが尿意を我慢する「膀胱訓練」。5分程度の我慢から始め、次第に排尿間隔を延ばしていきます。2、3時間の間隔を空けられるようにするのが目標となります。
もう一つが「骨盤底筋体操」。尿道、肛門などを締めたり緩めたりすることで排尿に関係する骨盤周辺の筋肉群を強めます。末金教授は「力を抜いた状態で、お尻の穴をキュッとすぼめるだけですが、やるのとやらないのでは非常に大きな差が出る優れた体操です。どんな体勢でもいいので、思い付いた時にやってください」と推奨します。

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この記事を書いた人

脳活、運動、食事、睡眠、社会参加、脳トレなどの普及・啓発活動による健康寿命の延伸・認知症予防の実現を目指す「脳活新聞」

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