ふくすま:Vol.1-1 高齢者の住まい探し 65歳から準備、75歳で計画を

 高齢化社会が一層進む中で、親の介護や自分自身の老後について不安を覚える人は大変多く、今後の生活や住まいをどう考えていくべきか、高齢者向け住宅に関する正しい知識や情報が求められています。​

 そこで「健康寿命の延伸」「認知症予防」「Well-being(ウェルビーイング)」の実現に取り組んでいる「脳活新聞」の一環として、高齢者向け住宅(有料老人ホームなど)に関する有益かつ正確な情報を提供する新プロジェクト「福岡シニアの住まい情報/ふくすま」をスタートしました。

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福岡県高齢者グループホーム協議会理事長 大谷るみ子さんに聞く

 日本は世界一の高齢大国です。総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は2020年に28.6%で世界1位。40年に35%、70年に39%に上昇する見通しです。平均寿命は男女とも80歳を超え、1人暮らしの高齢者も増加しています。老いても安心して暮らせる住まい探しは、多くの人が関心を持つテーマでしょう。介護のプロとして長年、この問題に取り組んでいるNPO法人「福岡県高齢者グループホーム協議会」の大谷るみ子理事長に話を聞きました。(聞き手は吉塚哲)

―施設探しはいつ始めたらよいのでしょうか?
 人生の後半はほとんどの人が介護サービスを受ける。もはやそういう前提で準備することが必要です。出発点は65歳。「介護保険証」が手元に届くときです。
 この世代は自分よりも親の介護に全力を注ぐ時期。親のために老人ホームのことや介護保険の仕組みをしっかりと調べます。つまり、親の介護を勉強することが自分の時の「予行練習」になるのです。私もこの世代です。

なるほど。では自分の施設探しのタイミングは?
 自分の介護を見据えて具体的な計画を立てるのは、75歳の時です。つい最近、85歳の方と、お話をする機会がありました。そのとき、彼女は「75歳の時にこれからの10年をどう生きるか、しっかりした計画を立てるべきだった」と悔やんでおられました。
 75歳の時に、どんな85歳でありたいか目標を定めるのです。例えば「自分の足で立っていたい」とか「自分の歯でご飯を食べたい」とか、行きたい場所や趣味など85歳までにやりたいこと、理想の自分を思い描くのです。そうすることが介護の時期を遅らせることにもつながります。高齢者に寄り添うご家族にお願いがあります。

―どんなことでしょうか?
 75歳からの10年間にどんな介護を受けたいのかなど、高齢者の介護に関する本人や家族の願いと思いを書き留めておいていただきたいのです。さまざまな市町村がこうしたことを書くノートを作っています。
 例えば「若い頃は俳句が好きだった」という情報があれば、施設の職員がケアに当たる際の参考になります。自分の言葉で書いてある高齢者の日記は、私たちにとってまさに「宝物」です。
 施設の見学は必ず予約をお願いします。どこの施設も人手不足。おまけにコロナ対応で見学の受け入れには慎重です。きちんと予約を入れて、一つの施設を複数回、見学することをお勧めします。

福岡県高齢者グループホーム協議会理事長
大谷 るみ子さん

大谷 るみ子さん :1957年、熊本県玉名市出身。2001年から福岡県大牟田市の社会福祉法人東翔会のグループホーム「ふぁみりえ」ホーム長を務める。認知症の高齢者にどこまでも寄り添う介護をモットーに活動。08年にはNHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」にも出演した。14年には西日本新聞生活面に「まちでみんなで―認知症と生きる」と題した連載を33回執筆した。

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