【脳活健康大学】腎臓は“体内の連携”の要 eGFR 、尿タンパクの確認を

腎臓は沈黙の臓器。症状がないまま進行することもあります。症状が出た時にはかなり進行しているケースもあるため、できるだけ早い段階でのチェックが必要。「尿タンパクは腎臓からのSOS。腎臓の働きを示すeGFRの変化を知ることも大事」と久留米大医学部内科学講座・腎臓内科部門の柴田了(しばたりょう)准教授は解説します。知らぬ間に重症化させないためには、健康診断を欠かさないことが大切。また、特に夏場には脱水にも要注意といいます。
※西日本新聞TNC文化サークル久留米教室の講座「脳活健康大学」を採録し、抜粋・構成

話を伺ったのは?

久留米大医学部内科学講座・腎臓内科部門
柴田了准教授

久留米大医学部内科学講座・腎臓内科部門の柴田了准教授

久留米大医学部内科学講座腎臓内科部門准教授。医学博士。同大病院腎臓センター主任、外来医長。1974年、福岡県久留米市生まれ。2000年、久留米大医学部卒。日本内科学会認定医・総合内科専門医・指導医、日本腎臓学会専門医・指導医、日本透析医学会専門医、日本腎臓リハビリテーション学会代議員など。

目次

約2,000万人が慢性腎臓病(CKD)

動脈から腎臓に入った血液は、糸球体という“ろ過装置”を通り、きれいな血液となって体内に戻っていきます。タンパク質など体に必要なものはろ過されずに体内に戻り、不必要な水分や毒素は尿として排出されます。ですから本来は漏れるはずのないタンパク質が尿と一緒に出るということは、腎臓に何らかの問題が起きている可能性があるということになります。

腎臓はこのほか体水分の調整や造血ホルモンの産生、ビタミンDの働きを活性化して骨を強くする役割も担っています。肺、肝臓、腸、心臓や脳とも密接に絡み合う「体内ネットワークの要」です。腎臓の血管を守るのは、全身の血管を守ることにつながります。

しかし、最近の報告では日本人の約2,000万人は慢性腎臓病(CKD)と推計されています。成人の5人に1人は腎臓の働きが落ちている、もしくは腎臓の病気があるのです。

慢性腎臓病は尿タンパクや血尿など尿異常がある、またはeGFRの数値が60未満であるなど、腎臓の構造や機能に異常が3カ月以上続く状態です。

慢性腎臓病について解説する柴田氏


eGFRの数値によってG1からG5までのステージに分類され、G5に近づくほど状態が悪化していることを示します。中等度になると夜間頻尿や疲れやすい、足がむくむなどの症状が出て、末期になると食欲減退や吐き気、尿量の減少などが見られます。

ただ、多くの人は「症状は何もない」と答えます。じわじわと毒素がたまって少しずつ体調が変化していくため、腎臓の働きが落ちた状態に慣れていってしまうのです。いよいよ体がきつくなって診察を受けた時には、すでに透析が必要なケースもあります。

ですからeGFRの数値は「点」ではなく「線」で捉え、過去の検査からどう変化したかを把握するのが重要です。加齢とともに腎機能は少しずつ低下することがありますが、その程度には個人差があります。健康診断で以前より低下が目立つ場合は、生活習慣の改善や治療で進行を遅らせることができるため、早めに専門医に相談してください。

eGFRとは
腎臓のろ過機能を推定する指標で、多くの健康診断データに記載されています。データ内の血清クレアチニン値を使い、日本腎臓学会などのホームページでも簡単に算出できます。

夏場の脱水に要注意 こまめに水分を摂取

もう一つ、尿検査の結果も重要です。尿タンパクが出るということは「このままでは危ない」というメッセージを腎臓が送っているということ。一時的に出ることもあるので、何度か検査をして毎回出るようであれば治療が必要です。

尿潜血は腎臓だけではなく尿管や膀胱(ぼうこう)が原因の場合もあり、腎臓内科でも泌尿器科でも受診できます。尿糖が出ている場合は内科やかかりつけ医院でもいいでしょう。ただし、潜血とタンパク質の両方が出ている場合は腎臓内科を受診することをお勧めします。

すぐにできる予防と対策として、特に夏場は脱水への注意が必要です。例えば炎天下で屋外作業を頑張り過ぎ、大汗をかいて体内の水分が少なくなると血液の量が減ります。その結果、腎血流が低下して急に腎臓の働きが悪くなることがあります。

発熱、下痢、嘔吐(おうと)、長時間の発汗、長風呂やサウナ、利尿剤の服用などで体水分が減ります。脱水は腎臓の大敵です。1日に1.5~2ℓの水分を喉が渇く前に小まめにとりましょう。

私は毎日の体重チェックや血圧測定を勧めています。体水分の減少によって体重が減ることもありますから、体重を見ていくのは重要かと思います。

腎臓を守るためには健康診断が不可欠

このほか腰や関節が痛くて痛み止めの薬を服用する人も多いかと思いますが、痛み止めには腎臓を疲れさせるリスクがあります。時々の服用は問題ありませんが、腎臓をチェックせず漫然と服用すると腎臓の働きが落ちてしまうこともあります。

サプリメントにも要注意です。健康食品も含め、サプリメントを服用している場合は受診の際に医師に伝えてください。何を摂取しているかが分からないと、腎臓の異常の原因を正確に見極めたり、適切な治療方針を立てたりすることが難しくなる場合があります。

熱心に講義に耳を傾ける参加者

腎臓病は治るのか、それとも治らないのか。腎臓は一度悪くなると元に戻らないことが多いのは事実です。しかし、悪化の早期発見で進行を遅らせることはできます。生活習慣の改善はもちろん、薬による治療も進歩しており、腎臓の働きを長く保つことが期待できます。まずは尿タンパクやeGFRで自身の腎臓の状態を知るため、健康診断を毎年欠かさず受けましょう。

日本の透析医療は高水準
腎臓病が重症になると血液透析、腹膜透析、腎移植の三つの治療法があります。「血液透析」は通院して週3回、4~5時間かけて血液を機械に通してろ過する方法です。日本では患者の約97%、約35万人がこの治療を受けています。「腹膜透析」は腹膜に管を入れ、透析の液を注入します。自宅で毎日でき、仕事や旅行もしやすいのが特徴です。「腎移植」はドナー不足などで日本では十分に普及していませんが、術後の生活の質が最も高い治療法です。

透析には生活の制限などネガティブなイメージがありますが「その誤解を正したい」と柴田氏。「仕事や趣味、旅行を続けている人もいますし、血液透析の治療中にも読書をしたり、スマートフォン、テレビを見たりして過ごす人もいます。日本は透析医療の体制や機器が高水準です」と説きます。

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