【松田丈志氏と学ぶ ”睡眠の質”】一流アスリートの睡眠を専門家が徹底分析

競泳のメダリスト・松田丈志氏が久留米大医学部の睡眠に関する研究施設「スリープラボ」を訪ね、日本睡眠学会の理事長を務める内村直尚学長、八木朝子准教授からアドバイスを受けました。良い睡眠を取るために自分を律してきた世界的アスリートも、専門家の指摘を聞きながら睡眠の重要性を再認識しました。

松田丈志氏(左)と内村直尚学長(右)

松田丈志氏が「スリープラボ」を訪問!

競泳のメダリスト・松田丈志氏

1984年生まれ、宮崎県延岡市出身。4歳から水泳を始め、延岡学園高3年時に日本代表入り。五輪には中京大2年の2004年アテネ大会で初出場。16年リオデジャネイロ大会まで4大会連続で出場した。08年北京大会の200mバタフライで銅、12年ロンドン大会では同種目の銅と400mメドレーリレーで銀、リオ大会で800mフリーリレーで銅と、計4個のメダルを獲得した。16年の引退後、鹿屋体大大学院で博士号(体育学)を取得。スポーツジャーナリストとして講演やテレビ出演、水泳教室での指導のほか、日本オリンピック委員会(JOC)理事や日本サーフィン連盟理事、日本水泳連盟アスリート委員なども務めている。普段は午後10時半ごろに就寝。2台のベッドをくっつけて妻、3人の子どもたち、愛犬と“ダブル川の字”で寝ているという。

競泳メダリストの松田丈志氏
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活躍の「三つの柱」練習、食事、睡眠

内村学長の「この日は飲み過ぎたかもしれませんね」という指摘に、松田氏は思わず苦笑いをもらしました。「確かにその晩は白ワインを1本、ほとんど1人で飲みました」。直前の4日間にわたって睡眠を計測する器具を装着して就寝。データを見ると、指摘された日の睡眠は細かく途切れ、いつもよりかなり早く目覚めていました。

松田氏(左)の睡眠データを見ながらアドバイスする内村学長(中央)と八木准教授(右)

ハードな練習を積み重ねるだけでは、長く世界のトップで活躍できません。「競泳は100分の1秒を削る勝負ですから、そのためには何でもやろうと。トレーニング、食事、そして睡眠が3本の柱だと考えていました」。現役時代、海外遠征に枕やマットレスを持参するなど、いかに良い睡眠を取るかに強くこだわり続けたといいます。

大勝負の前に重圧で眠れなくなることは想定内。大切にしたのは「毎日の練習のパフォーマンスを上げるため」の睡眠。そのために日々の生活を律しました。特に気を付けていたのが、睡眠に影響するアルコールとカフェインの摂取。「晩ご飯におすしを食べに行くと最後にお茶が出るじゃないですか。『僕は白湯(さゆ)にしてください』とお願いしていました」。飲酒もオフシーズンに限るなど、必要最小限にとどめました。

現役を退いて9年目。スポーツジャーナリストとして講演やテレビ出演など多忙な中でも運動は欠かせません。また、今でもカフェインの入った飲料は午後5時以降は避けています。一方で晩酌が日々の楽しみに加わりました。「加齢のせいかアルコールのせいか、夜間に喉が渇くのとトイレに起きることもあります」と睡眠の変化を自覚しているそうです。

睡眠フェアに出演 内村学長と対談

飲酒は睡眠に影響します。アルコールは寝付きを良くするものの、3、4時間するとアルデヒドという覚醒物質に変化するため眠りが途切れ、その後は深く眠れなくなります。1日の適量はビールなら500ml、日本酒は1合、ワインだとグラス2杯ほどです。

もちろん、眠りを良くするものや妨げるものは、ほかにもさまざまあります。内村学長は「現役時代の寝るための努力は素晴らしい。睡眠を制したことが結果につながったのだと思います。同じ努力は無理だとしても、良いことを少しでも取り戻してください」とアドバイス。松田氏も「現役時代の自分を見習います」と頭をかきました。

「現役時代の自分を見習います」と松田氏

26日(土)〜27日(日)にアクロス福岡(福岡市中央区)で開かれる「ふくおか睡眠フェア2025」では、内村学長との対談( 27日)を通して一般参加者に睡眠の大切さを呼びかけます。「日本人の睡眠時間が短いのは大きな課題だと思います。今後も日本が発展するために、また一人一人の幸福度がアップするためにも、睡眠の大切さを知ることに役立てれば」。日本の権威と世界のトップアスリートの睡眠に関する対談に要注目です。

松田氏と内村学長は「ふくおか睡眠フェア2025」で対談予定

日本の大学で初の施設「スリープラボ」

久留米大は昨年4月、医学部に医療検査学科を新設。学科内に日本の大学では初めて「スリープラボ」を設けました。

スリープラボは睡眠に関する研究施設で今春から稼働。遮音と調光が整った2部屋に、睡眠時の体位や動きを検知するベッドや、脳波、眼球運動、筋電図などさまざまな測定ができる検査機器を設置しました。この部屋で被検者は実際に眠り、検査技師らが観察やデータの解析を行うことで睡眠障害の診断や治療、研究に役立てています。

学生の指導や研究に当たるのは、日本睡眠検査学会で理事長を務める八木朝子准教授。内村学長は「日本では睡眠専門の検査技師も、検査できる施設も少ない。技師を育てるとともに、国民の健康と幸せのため、睡眠の重要性を発信したい」とラボ設置の意図を語りました。

久留米大医学部の睡眠に関する研究施設「スリープラボ」
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この記事を書いた人

脳活、運動、食事、睡眠、社会参加、脳トレなどの普及・啓発活動による健康寿命の延伸・認知症予防の実現を目指す「脳活新聞」

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