【医学博士インタビュー】健康長寿の実現へ 4つの「快」で心地よく

目次

認知症リスク要因は生活の中で改善が可能

世界でも類まれな長寿国である日本。ただ長生きするだけでなく、健康的で自分らしく過ごしたいいう思いは、多くの人が抱くテーマと言えるでしょう。今回、脳活新聞では久留米大学の精神科医で医学博士、同大高次脳疾患研究所の小路純央教授にお話を伺いました。小路教授はインタビューで「認知症のリスクは毎日の暮らしで減らすことができます」と語られています。

お話を伺ったのは?

久留米大学 高次脳疾患研究所 教授 小路 純央 先生

医学博士。1966 年生まれ、大分県中津市出身。久留米大医学部卒、同大学院医学研究科卒、米・オレゴン健康科
学大に留学(96~98 年)し、久留米大医学部 神経精神医学講座助手、講師、准教授、同大高次脳疾患研究所 准教授
を経て現職。福岡県認知症医療センター事務局(2011年~)、福岡県認知症施策推進会議 委員等も兼務。脳と心の問題を
客観的に捉えるため、脳画像研究等を通して「データの見える化」に取り組み臨床等に応用している。

認知症予防には、生活習慣を見直し孤立せず難聴にも注意

認知症予防、健康寿命を延ばすためにはどんな生活を送るべきか?

健康寿命の延伸や介護予防を妨げる主な要因としては、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの「生活習慣病」、加齢に伴う運動機能の低下による「ロコモティブシンドローム(運動器症候群)」、認知機能が低下する「認知症」の3つが挙げられ、これらはそれぞれ密接に影響し合っています。


例えば認知症は生活習慣病に起因するケースが多いのは久山町研究ほか数々の研究から明らかですし、運動機能が低下すると外出など移動しなくなり、その結果、社会的な交流の機会も減るので脳への刺激が低下します。これらを若い年代から意識して生活するのが大事です。

久山町研究とは?
福岡県久山町の住民を対象に1961年から続く生活習慣病の疫学調査。認知症の研究は85年から実施されている。

健康長寿延伸のため、具体的に気を付けたい行動は?

生活習慣病に関しては食事や運動、喫煙、アルコール摂取、睡眠といった毎日の習慣が大いに関係しています。また近年では、良質な睡眠が認知症予防につながると分かってきました。

世界的な医学誌「ランセット」の国際委員会が発表した論文では、認知症の約40%は〝修正可能な危険因子〞であり、若年期、中年期、晩年と世代別に気を付けるべき要因がまとめられています。

出典:Dementia prevention, intervention, and care:
    2020 report of the Lancet Commission

高血圧、肥満、糖尿病などいわゆる生活習慣病や運動不足が挙げられているほか、社会的孤立も高い割合です。幼い頃の低教育も関係しているとされます。喫煙もリスクの高い要因の一つ。血管収縮や血管障害を起こしやすくなり、脳梗塞、心筋梗塞の危険が高まるからです。

難聴も認知症の危険因子にあがっている

しかも高い割合です。この発表を受けて、私たちが実施している検診にも聴力テストを取り入れました。耳の聞こえが悪くなったと感じたら注意する必要があります。

40代から気を配り睡眠の質を大事に

認知症対策は40代からといわれる理由は?

認知症の約6割を占めるアルツハイマー病の要因とされる、脳にたまる異常タンパク質「アミロイドβ」は認知症発症の20〜30年前から蓄積が始まるとされ、仮に70歳で発症したとすると40代くらいからで、これには生活習慣病も大いに関係しています。特定検診が始まる年代でもあるので、欠かさず受けて生活習慣病があれば改善しておきたいですね。

また、これら異常タンパク質はぐっすり寝ているときに老廃物として排出されるので、いかに良質な深い睡眠をとるかも重要です。

認知症対策には、睡眠も大事

それなのに日本人は世界各国の中でも睡眠時間が極端に短いという統計が出ています。個人差はありますが、適切な睡眠時間は高齢者で5〜7時間。私も7時間は寝るように心掛けています。
 
高齢になると若者に比べ睡眠時間が短くなり、眠りが浅くなる傾向が見られます。体内時計を整え、日中にしっかり太陽光を浴びることで眠りを誘うホルモン「メラトニン」を分泌させる。1日の活動性を上げて体を適度に疲れさせるなどで改善します。

ストレスや心配事があると寝付きが悪くなるので、それらをためこまないのもポイントです。睡眠衛生指導をする場合もあります。

楽しく脳トレ。自己チェックや検診を!

脳トレに関しては、どう取り組むとよい?

体も頭も使わなければ機能は低下し、高齢者ほど進行した状態「廃用(症候群)」になりやすい。コロナ禍で家にこもっていて認知症の症状が進んだ、活動性が低下したというケースの報告もあります。

逆にいえば、日頃から意欲的に体と頭を使うのがよく、脳トレもおすすめです。継続が大事なので「やっていて楽しい」気持ちを大切に。「できた!」「できるようになった!」という達成感も脳によい刺激をもたらします。

認知症の自己チェックは可能?

日付や曜日の感覚があやふやになってきたら注意を。同じ話を何度も繰り返す、物の置き忘れ、しまい忘れが頻繁になる、薬を飲んだか分からなくなるといった行動も見られます。

早い段階だと運動や脳トレで改善できる場合も多いので、認知症にネガティブな印象を抱かずに専門医の検診を受けてほしいですね。

久留米大と久留米市は共同で無料検診に取り組んでいる

「ものわすれ予防検診」を2007年から実施しています。認知症は本人に自覚がない場合や、自分の状態に不安があってもなかなか受診に結びつかない実態があるからです。独居や老老介護で様子見をしているうちに進行しているケースも多く、早期発見の必要性がありました。

地域と連携して少しでも早い段階で見つけだし、いかに改善につなげるかが目的です。運動機能や聴覚、嗅覚にも着目し、検診内容を随時バージョンアップしています。

健康寿命延伸のためのメッセージ

私はいつも、4つの「快」を提唱しています。いわゆる快食、快眠、適度な運動、快便。これらは健康の秘訣であり、脳にも大変よいわけです。そしてメリハリのある生活リズムを心掛け、心地よく楽しく過ごしましょう。

健康寿命延伸のための「4つの快」とは?

1 食事  バランス良い食事を食べすぎることなく
2 運動  心地よい適度な運動で基礎体力を保つ
3 睡眠  質の良い眠りで健やかに
4 便通  すっきりと快便で腸を元気に

よかったらシェアしてね!

この記事を書いた人

西日本新聞社では、賛同する行政や団体、企業とともに「脳活新聞」プロジェクトに取り組み、運動、食事、睡眠、社会参加、脳トレなどの普及・啓発活動による「健康寿命の延伸」「認知症予防」の実現を目指します。

目次
閉じる