高齢の方の転倒は、外出先よりも住み慣れた自宅で起きやすいことが分かっています。東京消防庁の救急搬送データでは、65歳以上の「ころぶ」事故の半数以上が住宅などの居住場所で起きていました。
この記事では、自宅のどこで転びやすいのかをデータで確かめ、場所ごとの対策と、介護保険を使った住まいの見直し方をまとめます。結論は「段差・床・明かり・動作」の4点を見直すことです。
目次
高齢者の転倒は、自宅の中で多く起きている
東京消防庁の「救急搬送データからみる高齢者の事故」によると、2024年(令和6年)に日常生活の事故で救急搬送された65歳以上の人は9万8056人でした(東京消防庁管内)。このうち「ころぶ」事故は7万3500人で、最も多くなっています。
「ころぶ」事故の発生場所は、住宅などの居住場所が4万2180人で最多でした。そのうち9割以上の3万9053人は屋内で起きています。
転倒は、介護が必要になるきっかけの一つでもあります。厚生労働省の「2025年国民生活基礎調査」では、介護が必要となった主な原因として「骨折・転倒」が14.6%を占め、認知症、高齢による衰弱に次ぐ3位でした。要介護者に限ると14.8%で2位です。
転びやすい場所は「居室・寝室」 次いで玄関・廊下
同じデータで、住宅内の「ころぶ」事故を場所別に見ると、居室・寝室などが2万9783人と突出して多くなっていました。続いて玄関・勝手口などが3900人、廊下・縁側・通路が2653人です。
住宅内で「ころぶ」事故が起きた場所(65歳以上、2024年、東京消防庁管内)。東京消防庁「救急搬送データからみる高齢者の事故」をもとに脳活新聞作成
毎日長く過ごす部屋ほど、「慣れているから大丈夫」と油断しやすい場所でもあります。また、「落ちる」事故(8719人)の原因で最も多いのは階段(4240人)でした。
場所別にできる転倒対策
消費者庁や福岡市消防局の注意喚起をもとに、場所ごとの見直しポイントをまとめました。
居室・寝室:床の上の物を減らす
- 新聞や雑誌、衣類などを床に置かないようにする
- 電気製品の配置を工夫し、電源コードが通り道にかからないようにする
- めくれやすい敷物や、端が浮いたカーペットは固定するか片付ける
- 寝起きや夜のトイレでは、起き上がる動作や体の向きを変える動作をゆっくり行う
夜中にトイレへ行くときは、足元が見えるよう明かりをつけてから歩くと安心です。
玄関・廊下・階段:段差に手すりと明かりを
- 段差や階段、玄関に手すりや滑り止めを取り付ける
- 廊下や階段は足元が暗くならないよう、照明を見直す
- 階段や玄関には物を置かず、整理整頓を心がける
浴室・脱衣所:滑りにくくし、寒さにも注意
- 浴室と脱衣所に滑り止めマットを敷く
- 浴槽から急に立ち上がらない
福岡市消防局は、12月から2月にかけて、浴室や脱衣所での転倒や失神による救急搬送が増えるとしています。入浴前に浴室と脱衣所を暖めておくことも、冬に向けた備えになります。
体づくりと履物も見直す
消費者庁は、体の機能の低下を防ぐため、自分に合った適度な運動を続けることも勧めています。室内でも、かかとが脱げにくく滑りにくい履物を選ぶと安心です。
手すりや段差の工事には介護保険が使える場合も
要介護・要支援の認定を受けている方は、介護保険の「住宅改修」を利用できる場合があります。北九州市の案内(2026年7月更新)によると、対象となる主な工事は次の通りです。
- 手すりの取り付け
- 段差の解消
- 滑りにくい床材への変更
- 引き戸などへの扉の取り替え
- 洋式便器などへの取り替え
支給限度基準額は要介護度に関係なく20万円で、自己負担は原則1割(所得により2割または3割)です。工事を始める前の事前申請が必要で、申請前に着工した工事は対象外になります。
細かな手続きは市区町村によって異なります。まずはケアマネジャーや、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口、地域包括支援センターに相談してみてください。
家族ができること
離れて暮らす親の家を訪ねたときは、床に置かれた物、暗い場所、手すりのない段差がないか、一緒に家の中を歩いて確かめてみてください。帰省や年末の大掃除は、住まいを見直すよい機会です。
転んだ後に痛みが続く、立ち上がれないといった場合は、無理に動かさず、医療機関に相談しましょう。
よくある質問
Q. 高齢者の転倒は、家の中と外のどちらで多いですか?
A. 東京消防庁の2024年のデータでは、65歳以上の「ころぶ」事故は住宅などの居住場所が最も多く、そのうち9割以上が屋内で起きていました。
Q. 家の中で特に気をつける場所はどこですか?
A. 同じデータでは、居室・寝室などが最も多く、玄関・勝手口、廊下・縁側・通路が続きます。毎日過ごす部屋の床やコードを見直すことから始めると取り組みやすいでしょう。
Q. 手すりの取り付けに補助はありますか?
A. 要介護・要支援の認定を受けている方は、介護保険の住宅改修で、手すりの取り付けや段差の解消などの費用の一部が支給される場合があります。工事の前に申請が必要です。
まとめ
- 65歳以上の「ころぶ」事故は、住宅などの居住場所で最も多く起きている
- 特に多いのは居室・寝室。床の物やコードを片付け、段差には手すりと明かりを
- 手すりや段差解消の工事は、介護保険の住宅改修を使える場合がある。まずは相談を
日が短くなるこれからの季節は、足元が暗くなりがちです。今日は、寝室から玄関までの通り道を一度歩いて確かめてみませんか。
秋の散歩を安全に楽しむコツは「秋のウオーキング シニアの歩数の目安は? 安全に続けるコツ」で、転ばないための体づくりは「【脳活健康大学】骨折リスクを遠ざける 転ばぬ先のストレッチ」で紹介しています。夜中のトイレが気になる方は「高齢者の睡眠 寝床は8時間未満が目安 秋の夜長に見直す習慣」もご覧ください。
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※この記事の内容は2026年10月時点の情報です。