【脳活健康大学】食+動で、さらなる活力 健康増進へのスパイラル

食べ過ぎ注意の年末年始。おまけに寒さが厳しくなるほど動くのがおっくうになります。とはいえ、健康な生活の基本は「食べる」と「動く」。久留米大人間健康学部スポーツ医科学科の松永裕講師は「バランスの良い適量の食事を取り、運動を習慣化することで、エネルギーが生まれてさらに運動に取り組めます。そうした良いスパイラルを目指してほしい」と語ります。
※西日本新聞TNC文化サークル久留米教室の講座 「脳活健康大学」を採録し、抜粋・構成

話を伺ったのは?

久留米大人間健康学部スポーツ医科学科
松永裕講師

久留米大人間健康学部スポーツ医科学科の松永裕講師

新潟県出身。新潟大教育人間科学部健康スポーツ科学課程を卒業後、東京大大学院身体運動科学研究室で修士・博士課程を修了。博士(学術)。森永乳業・健康栄養科学研究所の特任研究員、東京大大学院身体運動科学研究室の助教を経て、2023年から現職。サプリメントの効果や、効率的な栄養摂取方法の検討など、主にスポーツ栄養学の研究を行っている。

目次

【1. 食べる】死亡リスクを高める 太りすぎ、痩せすぎ

「食べ過ぎはもちろん、必要量に足りない食べな過ぎにも注意」 と話す松永氏

「You are what you eat」。これは英語の有名なことわざです。直訳すると「あなたは、あなたの食べたもの」。私たちは何を食べるかによって、体がつくられていくのです。

栄養を考える上で、まず知っておきたいのが五大栄養素=糖質(炭水化物)、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラル=の役割です。エネルギーになるのは糖質、脂質、たんぱく質で、これらは三大栄養素とも言います。ビタミンはエネルギーの産生を助けます。筋肉を大きくするたんぱく質、骨を強くするミネラル。ビタミンやミネラルは身体機能を調節します。

また、よく耳にするのが「カロリー」です。これは熱量(エネルギー量)の単位で、1kcalとは1ℓの水を1度上昇させるのに必要なエネルギーです。



1日に必要とするエネルギー量は、年齢を重ねるに従って減ってきます。加齢で筋肉量が減り、エネルギー消費量も減るため、必要な食事量も減るのです。食べ過ぎはもちろん、必要量に足りない食べな過ぎにも注意しなければいけません。

摂取したカロリーの中での三大栄養素のバランスにも注意が必要です。理想はたんぱく質が15〜20%、脂質が20〜30%、糖質は50〜65%です。



肥満度を測る数値がBMI(体格指数)で、体重(kg)÷身長(m)÷身長(同)で求めます。22ぐらいが良好、25以上は肥満です。おおむね22〜25の人は死亡リスクが低く、30を超える太り過ぎや、14や15といった痩せ過ぎは、どちらもリスクが上昇します。

【2. 運動する】運動習慣を身に付け、基礎代謝のアップを

簡単にできる運動を実践する参加者

私たちの体はエネルギーの摂取と消費のバランスによって変化します。摂取の方が多ければ太り、消費の方が多ければ痩せます。

消費は大きく分けて三つの要素で構成されています。一つは「身体活動」で1日の消費量の約30%を占めます。意識的な運動だけでなく、家事などの日常生活でもエネルギーを消費します。約10%は「食事誘発性熱産生」。食事で体温が上がるのは消費しているからです。

最も多い約60%を占めるのは、安静にしていても体温維持や臓器の活動などでエネルギーを消費する「基礎代謝」です。筋肉は基礎代謝量の約21%分の貢献をし、一方で脂肪の貢献は約4%分です。同じ体重であっても、筋肉が多い人は基礎代謝が高くエネルギーを消費しやすい、脂肪が多い人は基礎代謝が低くより太りやすいといえます。

それだけ筋肉は大切なのですが、何もしないと加齢に伴って筋肉量は減ってしまい、生活の質を低下させることや、糖尿病や高血圧などの代謝性疾患のリスクを高めるとされています。これらを防ぐためには運動が重要で、若い世代だけでなく年齢を重ねてもレジスタンストレーニング(筋トレ)によって筋肉量を増やし筋力アップすることが、さまざまな研究で証明されています。

さらに、息が上がるような高強度の運動に取り組むと、最大酸素摂取量が向上します。これは酸素を取り込んでエネルギーを生む能力、つまり持久力の指標です。きつい運動ではなくても、日頃から定期的に体を動かしている人は持久的な能力が高くなります。

一方で運動をやめてしまうと筋肉量、筋力、最大酸素摂取量、さらには血液の総量も落ちます。健康の維持・増進のためには、習慣的な運動をしっかり行うことが大切です。

【3. 体力アップ】エネルギー生み出すミトコンドリア

松永氏の講義を熱心に聞き入る参加者

体内で三大栄養素をエネルギーに変換してくれるのは細胞小器官の「ミトコンドリア」。筋肉、内臓などいろいろな部位の細胞に共存する、いわば体内のエネルギー工場です。その量が多いほど持久的な運動能力が上がり、少ない人はすぐにへばります。寿命の延伸にも関係し、量が多く、それらが働く機能が高い人の方が元気です。

ミトコンドリアも加齢によって量や機能が落ち、その低下は肥満や糖尿病の原因にもなります。下降を食い止めるために必要なのが定期的な運動。特に持久的な運動や高強度の運動が有効です。

ただし、けがは避けなければいけません。無理なくできる範囲で習慣的に運動することを心掛けてください。例えばウオーキングの速度を速めにするなど、少し強度を上げることから始めるのが良いでしょう。または、膝や足腰に負担の少ない水中ウオーキングなどがお勧めです。

元気で活力のある生活を送るため、食事に気を付け、無理のない運動をコツコツと行う。そうするとミトコンドリアが、さらなる元気や活力を呼ぶエネルギーを生み出してくれます。

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この記事を書いた人

脳活、運動、食事、睡眠、社会参加、脳トレなどの普及・啓発活動による健康寿命の延伸・認知症予防の実現を目指す「脳活新聞」

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