【脳活健康大学】子どもの“変化”から見える「いきいき生活」の大切さ

子どもたちの発育・発達の研究を通して、シニアにとっての良好な暮らし方も見えてくる―。久留米大人間健康学部スポーツ医科学科の野田耕教授は、子どものからだや行動の“おかしさ”について教育現場の実感を調査し、その分析に基づいた、良質な保健体育の実践などに取り組んでいます。そうした研究から、子どものみならずシニアにも推奨するのが「いきいき生活」です。
※西日本新聞TNC文化サークル久留米教室の講座「脳活健康大学」を採録し、抜粋・構成

話を伺ったのは?

久留米大人間健康学部スポーツ医科学科
野田耕教授

久留米大人間健康学部スポーツ医科学科の野田耕教授

佐賀県塩田町出身。日本体育大大学院を修了後、上智大や九州共立大の講師を経て2017年に久留米大人間健康学部へ。22年より現職。研究領域は学校保健学、学校体育論。博士(体育科学)。子どものからだと心・連絡会議運営委員、NPO法人子どもとメディア理事、日本幼少児健康教育学会常任理事、福岡県体力向上推進委員会委員、久留米市立部活動地域移行検討協議会会長などを務める。

目次

どうすれば子どもが外で遊ぶのか

遊び・運動・スポーツは身体活動で、主体的で無理をしないレベルの身体活動が健康に良いものであることを、私たち大人は認識しています。同じように子どもたちにも、もっと屋外で遊んでほしい、もっと身体活動をしてほしいと考えています。

では、どうすれば子どもたちは外で遊ぶのでしょう。子どもが主体的に外で遊んでいるか、遊んでいないか。また、遊ぶためには何が必要なのか。それを調査し、分析しました。

講座の様子


まず学校の昼休み。この40〜45分間の休み時間に、外で遊ぶ子と遊ばない子の間には、どんな特徴があったのか。そもそもからだを動かすことが好きな子は、嫌いな子に比べて3倍も外で遊んでいました。また、遊びたい用具がある子は、遊ばない子に比べて約1.8倍も外で遊びます。
さらに、子どもたちの日常生活を調査すると、起床時刻が遅い子ほど、外で遊ばなくなることが分かりました。また、朝食が細い子ほど外で遊びません。朝食をもりもりと食べる子は外で遊んでいました。

習い事やスポーツクラブも関係します。スポーツクラブに通っている子は、もともとからだを動かすのが好きな子でしょう。また、スポーツ以外の習い事に通う子も外で遊びます。習い事に行けば友達がいて、それが外での遊びにつながるのだろうと想定されます。
さらに、スクリーンタイムが長い子ほど外で遊ばなくなります。スクリーンタイムとは、スマートフォンやパソコン、テレビ、ゲーム機などの使用に費やした時間のことです。家庭生活の中で、インターネットから子どもを切り離してあげることは大事かもしれません。外で遊びなさいと言うと、公園に携帯型ゲーム機を持って行って遊ぶ子もいますが、そうではなくて完全に遮断する時間帯が必要ではないでしょうか。

メリハリある生活が主体的な身体活動に

すなわち用具や施設などが整った環境やメリハリのある生活習慣が、より活発な身体活動につながっていく。これは子どものみならず大人にも、もちろん高齢者にも共通しています。物理的環境を整え、スカッとした気分を得ようとからだを動かすと、それが次の運動につながっていくのです。

例えば外出は運動になり、脳も使います。帰宅後の夕飯をおいしくいただくことができるでしょう。そうした「いきいき生活」をお勧めします。50歳、60歳、70歳から始めても、できることは結構あります。人間は生涯、発達する。そういう考えで日常生活を楽しんではいかがでしょうか。

大人でも注意が必要 ネット・ゲーム依存

最近の子どもたちに気になるところや、自分たちの子どもの頃との違いを感じることはありませんか。私は職業柄、よく観察しますが「昔はあんなことしていたかな」という事象が多々あります。
学校に参観に行くと休み時間に廊下でゴロゴロしている子を目にします。現場の先生から「朝からボーッとしている」「すぐに疲れたと言う」「転んでも手が出ない」という話も聞きます。これを私たちの研究領域では「子どものからだのおかしさ」と定義しています。保育・教育の現場、家庭、地域などで大人が実感する子どものからだや行動のおかしさ、異変です。

日本体育大は1978年からほぼ5年ごとに「子どものからだの調査」を続けています。直近では2020年です。体育学部の野井真吾教授や関連する研究会、私たち卒業生が集まって77項目の質問を設定し、教育現場の先生たちの実感を調査しました。例えば、授業中にじっとしていない子がこの5年間で「増えた」「減った」「変わらない」「いない」「分からない」の5択で答えてもらいます。


その結果、小中高で「最近増えている」という実感の共通のワースト1は「ネット・ゲーム依存」でした。実に約8割の先生が、インターネットや、ネットを介して遊ぶオンラインゲームへの依存を実感しています。
実際に世界保健機関(WHO)は19年に精神疾患のカテゴリーの中にオンラインゲーム障害を加えました。日本でも治療が進められています。オンラインゲームは非常に中毒性や依存性が強く、大人でも障害を発症します。

人間をコントロールするのは脳です。車の運転に例えると、ゲームをやめられないのはアクセル全開の状態。大脳の前頭連合野が興奮してアクセルを踏む指令を出し続け、抑えが利かなくなるのです。

子どもも大人も脳を働かせよう

ブレーキをかけたり、アクセルとブレーキを交互に操作したり。そうした大脳の切り替え、すなわち前頭葉のバランスが重要です。このネット社会で、それが必要なのは子どもだけではありません。皆さんも、スマホを見ていて、気が付くと2時間もたっていたという経験はありませんか。
また、幼児で気になるのが「背中ぐにゃ」。つまり姿勢の悪さです。さまざまな原因の中、一つは筋力です。腰や背中、おなかなどの筋肉が弱いと腰が落ちて猫背になります。二つ目は生活習慣。スマホやゲームの影響で普段から前かがみになる。そして三つ目、やはり脳の前頭葉です。

「姿勢を良く」の一声を受ければ前頭連合野が運動野に指令を出し、神経を伝って筋肉に伝達され、動きとして表出されます。脳を働かせること。それは子どものみならず、大人にとっても重要なのです。

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脳活、運動、食事、睡眠、社会参加、脳トレなどの普及・啓発活動による健康寿命の延伸・認知症予防の実現を目指す「脳活新聞」

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