人は「普段の食事」で、生命維持に必要な1日の水分量(水+電解質)の約半分を摂取していることを知っていますか?水と電解質の摂取によってつくられる体液は日々入れ替わり、それにより人の健康が維持されているのです。脱水症や熱中症のリスクを避けるだけでなく、健康を維持するためにも、食事から摂れる水分は重要な役割を果たしています。
熱中症シーズン、食事を抜くことやダイエットが危険な訳について、教えて!「かくれ脱水」委員会委員長・服部益治先生が解説します。
目次
16%の人しか知らない!水分量の半分は食事から
人が生きていくうえで1日に必要な水分(水+電解質)は、一般的に1500ml〜2500ml。そのうち約半分の量を、食事から摂取しています。
しかし、この事に関する認知率はまだまだ低い状況です。
2022年1月に実施された大塚製薬工場のインターネット調査(対象:20歳〜69歳 1030名)によると、「1日に必要な水分の約半分は食事から摂っている」「食事量の減少により脱水症になり得る」ことについて、「知っている」と答えた方々は、それぞれ約16%、18%でした。
食事は「栄養とカロリーを摂るもの」と捉えている人が多いようですが、実は生命を維持することに直結する「水と電解質の摂取」においても重要な役割があると言えます。
特に「高齢者」と「小児」は食事からの水分摂取が重要
食事による水分の摂取が、1日に摂取する水分量の約半分を占めていることを知ると、様々なことに気が付きます。
例えば、高齢者が熱中症や脱水症になりやすいことには幾つかの理由があります。中でも、水分貯蔵庫である筋肉の量自体が減少傾向にあること、食事量の減少に伴う水分摂取量が低下することが大きな要因です。体に蓄えられる水分量が少なくなっている高齢者は、1日3回の食事とこまめな水分補給が特に重要だとわかります。
また、体の生理機能が十分に発達していない小児は、皮膚や呼吸から自然と失われる水分量(不感蒸泄)が多く、汗腺の発達も未熟で体温調節がうまくできせん。遊びなどに夢中になりやすく、体の異変や喉の渇きに気付きにくいことも脱水状態を進める要因となります。
意識的に水分摂取が必要な小児が、欠食することは、出来る限り避けるべきです。
水分視点で見る朝食の重要性
年齢に関係なく、朝食抜きで早朝のクラブ活動に参加したり、仕事に出かけたりした人は、脱水症や熱中症になりやすいです。
人は、睡眠中にコップ1杯程度の汗をかいていると言われています。朝は、1日の中でも脱水リスクが高くなっている状態。それを朝食に含まれる水分によって補っているのです。
朝食の欠食により脱水状態になった場合は、集中力を欠如させることも分かっています。
表立った脱水の症状が表れなくとも、集中力がなくなったり、生産性が低下したりするなどの悪影響が出る可能性があります。
近年、健康を考える上で、5大栄養素の役割や摂取カロリーについて意識する人は増加傾向にあります。様々な栄養素のサプリメントや、カロリーコントロールを行う商品等もありますが、熱中症や脱水症対策には、3度の食事が何より大切です。
3度の食事により水分と塩分などの電解質を適時適切に摂ることで、1日を健やかに過ごせる基本ができると考えられます。
最近は、1日1食や2食といったライフスタイルのトレンドもあり、若い世代には朝食抜きが定番化している層もあると言います。
1日の食事量の増減ですぐに栄養不良になることはそう多くないと考えられますが、欠食は脱水症のリスクが高まるため注意が必要です。
場合によっては「経口補水液」という選択肢も
せっかく健康のために行っている食事量の調節も、気を付けないと脱水症リスクが高くなり、季節によっては熱中症リスクも高めてしまうのでは本末転倒です。
健康維持や美容のために食事量を調節するという人も、極端に量を減らしたり欠食したりしてしまうと、自然に食事から摂れるはずの水分がとれず、体水分量が減少し、本来の水分出納バランスが崩れてしまうことを知っておく必要があります。
健康増進の目的で食事量を減らす場合や止むを得ず食事を抜いてしまう場合などは、「水+電解質」を意識し、1日の出納を考えた体水分マネジメントを心がけましょう。
食事量の調節で脱水症になった場合は、脱水した体に必要な水と電解質をバランスよく含んだ「経口補水液」の摂取が役に立ちます。
その備えとしての経口補水液を常備しておくと良いでしょう。
【監修】教えて!「かくれ脱水」委員会委員長 服部益治(はっとり・ますじ)先生
社会福祉法人 枚方療育園 医療福祉センター さくら 院長兵庫医科大学 特別招聘教授 医学博士
日本小児科学会 (専門医)、日本小児保健協会会員、日本腎臓学会 (指導医・専門医)、兵庫県小児科医会 (顧問)、日本夜尿症学会(常任理事)など。著書に、『腎・泌尿器疾患診療マニュアル(共著)』(日本医師会)、『腎臓病の食事指導ハンドブック(共著)』(南江堂)、『保健医療ソーシャルワーク実践(共著)』(中央法規出版)、『子どもの臨床検査-脱水(共著)』(診断と治療社)など