高齢者の運転免許返納 考えるきっかけと手続き、福岡県の支援

「最近、車庫入れで車をこすった」「夜の運転が見えにくい」。そんな小さな変化から、運転をいつまで続けるか考え始める方は少なくありません。親の運転が気になっている家族の方もいるでしょう。

運転免許の自主返納は、年齢で一律に決まるものではありません。まずは自分の運転を見直し、家族や警察の相談窓口に話してみることが第一歩です。この記事では、75歳以上の免許更新の流れ、返納の手続きと「運転経歴証明書」、福岡県内の支援サービスを紹介します。

目次

運転を見直すきっかけ こんな変化はありませんか

運転に不安を感じたら考えられる3つの選択肢の図。まず家族と話し「#8080」に相談。1工夫して続ける(補償運転)、2車を限って続ける(サポカー限定免許)、3自主返納する(運転経歴証明書、割引などの支援)
出典:警察庁「令和7年版 警察白書」、福岡県警察、福岡県の資料を基に脳活新聞WEB編集部作成

運転を続けるかどうかは、日頃の小さな変化に気づくことから始まります。神奈川県警察は、相談を勧める例として次のような場面を挙げています。

  • 若い頃に比べて、運転に不安を感じる
  • 免許の更新や返納を迷っている
  • 信号の見落としや「ヒヤリ・ハット」に心当たりがある
  • 家族として、親の運転が危なくなってきたと感じる

当てはまるからといって、すぐに運転をやめる必要があるわけではありません。気になる変化があれば、一人で抱え込まずに相談することが大切です。

まずは「補償運転」で負担を減らす

福岡県警察は、加齢による体の変化を踏まえて運転の仕方を工夫する「補償運転」を呼びかけています。例えば次のような工夫です。

  1. 雨の日は運転を控え、晴れの日に運転する
  2. 夜間は控え、明るい昼間に運転する
  3. 長い距離の運転は避ける
  4. 近所のスーパーや病院など、行き先を絞る

こうした工夫をしても不安が残る場合は、家族と相談して自主返納を考えるよう案内しています。

75歳以上の免許更新はどう変わる?

70歳を過ぎると、免許の更新時に受ける講習や検査が加わります。警察庁の「警察白書」(2025年版)をもとに、主な流れを整理しました。

  • 70歳以上:更新時に2時間の「高齢者講習」を受ける(講義、運転適性の検査、実際に車を運転する指導)
  • 75歳以上:免許の有効期間が切れる日より前の6か月以内に「認知機能検査」を受ける
  • 75歳以上で一定の違反歴がある方(普通自動車を運転できる免許を持つ方):同じ期間内に「運転技能検査」を受ける。合格しないと更新できないが、更新期限までは繰り返し受けられる

運転技能検査では、一時停止や信号の通過などの課題があります。検査の対象者は、高齢者講習のうち実車指導を除く1時間の講習を受けます。受検の時期や予約の方法は、福岡県警察のホームページなどで早めに確認しておくと安心です。

「サポカー限定免許」という選択肢

すぐに返納するのではなく、運転できる車を限る方法もあります。「サポートカー限定免許」は、衝突被害軽減ブレーキと、ペダルの踏み間違いによる急な加速を抑える装置を備えた車(サポカー)に限って運転できる免許です。警察白書は、返納と運転継続の「中間的な選択肢」と位置づけています。

ただし、福岡市はこうした装置について、条件によっては作動しないこともあるとして、機能を過信しないよう呼びかけています。

運転免許の自主返納の手続きと「運転経歴証明書」

自主返納は、正式には「申請による運転免許の取消し」といいます。有効期限内の免許が対象で、期限が切れた免許は申請できません。

福岡県内では、運転免許試験場や警察署の交通課の窓口で手続きができます(交番・駐在所は不可)。福岡県警察は、本人が免許証を持って手続きするよう案内しています。必要なものや受付時間は、事前に福岡県警察のホームページや最寄りの警察署で確認してください。

身分証明書として使える「運転経歴証明書」

返納した後、5年以内に申請すると「運転経歴証明書」の交付を受けられます(手数料が必要)。運転免許証の代わりに、本人確認の書類として使えます。

また、2025年3月からは、運転経歴の情報をマイナンバーカードに記録する「マイナ経歴証明書」の運用も始まっています。福岡県内の多くの割引サービスでは、運転経歴証明書の提示が条件になっています。

福岡県内で受けられる返納後の支援

青い座席と黄色の手すりが並ぶ路線バスの車内
写真はイメージです

車を手放した後の移動が心配で、返納に踏み切れない方もいるでしょう。福岡県は、返納した高齢者を支援する事業者や自治体の取り組みをホームページで紹介しています(2026年4月更新)。主な例は次の通りです。

  • タクシー料金の割引(福岡・北九州・筑後の各地区のタクシー協会加盟事業者など)
  • バスの定期券・乗り放題券の割引(西鉄バスの「グランドパス」、福岡市交通局の「ちかパス」など)
  • JR九州の「免許返納おでかけきっぷ」
  • 市町村によるコミュニティバス回数券、交通系ICカード、タクシー利用券などの交付

対象年齢は70歳以上としている自治体が多く、65歳以上の自治体もあります。内容や条件は自治体や事業者ごとに異なるため、お住まいの市町村や各事業者に確認してください。

外出や買い物、配食などの暮らしの相談は、各市町村の「地域包括支援センター」でも受け付けています。返納後に自転車に乗る方は、福岡県では2020年10月から自転車保険への加入が義務になっている点も覚えておきましょう。

家族で話し合うときのヒント

リビングのソファに座り、向かい合って話をするシニアの男性と若い男性
写真はイメージです

親に返納を勧めたいとき、「危ないからやめて」と一方的に伝えると、反発を招くこともあります。車は長年の生活の足であり、自立の象徴でもあるからです。編集部では、次のような進め方をおすすめします。

  1. 運転に出かける場面(買い物、通院など)を一緒に書き出す
  2. それぞれの場面で、バスやタクシー、家族の送迎などの代わりの手段を考える
  3. 福岡県の支援サービスなど、返納後の暮らしに役立つ情報を一緒に調べる
  4. 本人や家族だけで決めにくいときは、警察の相談窓口に一緒に相談する

迷ったら安全運転相談「#8080」へ

警察には、運転の継続や返納について相談できる窓口があります。全国共通の電話番号「#8080(シャープハレバレ)」にかけると、住んでいる都道府県警察の安全運転相談窓口につながります。加齢による体の変化を踏まえた助言や、自主返納制度の案内が受けられます。家族からの相談を受け付けている県警もあります。

体の不調や物忘れが運転に影響していると感じる場合は、かかりつけ医に相談することも考えてみてください。

よくある質問

Q 何歳になったら返納しなければいけませんか?

年齢による返納の決まりはありません。75歳以上は更新時に認知機能検査などがありますが、返納するかどうかは本人の運転の状態や暮らしに合わせて考えます。

Q 返納すると、身分証明書がなくなりませんか?

返納後5年以内に申請すれば、運転経歴証明書の交付を受けられます。本人確認の書類として使えるほか、福岡県内では多くの割引サービスの提示書類になっています。

Q 家族が代わりに返納の手続きをできますか?

福岡県警察は、本人が免許証を持って手続きするよう案内しています。事情がある場合は、事前に最寄りの警察署に相談してください。

まとめ

  • 運転を見直すきっかけは、日頃の小さな変化。まずは「補償運転」で負担を減らす方法もある
  • 75歳以上は更新時に認知機能検査があり、違反歴によっては運転技能検査も必要
  • 返納後は運転経歴証明書が身分証明書になり、福岡県内では交通機関の割引などの支援がある

運転を続けるか迷ったら、家族で話し合い、「#8080」に相談してみてください。歩いたり、バスで出かけたりする時間も、心と体の元気につながります。

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参考資料

※この記事の内容は2026年10月時点の情報です。

文:脳活新聞WEB編集部(西日本新聞社)

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