年を取れば息切れしたり、咳(せき)やたんが出たりするのは当たり前…と軽く見てはいけません。それらの裏側には何らかの病気が隠れている可能性があるといいます。久留米大医学部内科学講座呼吸器・神経・膠原(こうげん)病内科部門(第一内科)の星野友昭主任教授は「普段の生活で息切れするのは年のせいではありません。息切れ、咳、たんは見逃せない体からのサインです」と警告します。
※西日本新聞TNC文化サークル久留米教室の講座「脳活健康大学」を採録し、抜粋・構成
話を伺ったのは?
久留米大医学部内科学講座呼吸器・神経・膠原病内科部門(第一内科)
星野友昭主任教授
久留米大医学部内科学講座呼吸器・神経・膠原病内科部門(第一内科)の星野友昭主任教授
医学博士。1989年久留米大医学部卒。93年同大学院を修了し、同医学部内科学講座(第一内科)に入局。95年同免疫学講座、97年米国立がん研究所への留学、2002年東北大医学部免疫学教室への国内留学などを経て、11年から現職。久留米大病院・呼吸器病センター長、東北大医学部非常勤講師も務める。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医・九州支部長、日本内科学会評議員など。
目次
息切れの程度に注意 長引く咳も受診を
階段を上ると息が切れる。咳が何週間も続く。横になると息苦しい。こういう経験はありませんか。
肺は老化する臓器です。ただし、普通は90歳であっても普段の生活で息切れすることはありません。私の師匠で当科の相澤久道教授と工藤翔二先生(現公益財団法人結核予防会複十字病院院長)が「肺年齢」を提唱しましたが、90歳でも非喫煙者なら肺の機能は50%以上を保ちます。
息切れ、咳、たんについて講義する星野氏
例えば、がんや結核で片方の肺を切除した人もいますが、片方の肺、すなわち全体の50%程度の機能でも、通常の生活を送ることができます。もちろん、生まれつき肺が小さい人などの例外はあります。しかし、普段の生活で息切れするなら、年齢のせいと決めつけてはいけません。
では、どの程度の息切れが危険サインなのか。その度合いを自己チェックするスケールがあります。
激しい運動をした時や、坂道や階段を急いで歩くと息が切れるのは問題ありません。しかし、平地でも同年代の人より歩くのが遅い、坂道で特に息切れするといった人は要注意。数分歩いて息切れで立ち止まるようなら、すぐに受診してください。着替えでも息が切れるようであれば、命の危険もある状態です。
咳は、どのぐらい続くかが重要です。3、4週間も続くようなら何らかの病気が隠れている可能性があります。3週間未満であれば多くは風邪ですが、3〜8週間ならば近くの病院に相談しましょう。8週間以上も続くようだと専門医が原因を調べる必要があります。くれぐれもサプリメントなどで抑えたりしないように。体重の減少や、息切れを伴う場合は要注意です。夜間や早朝にひどくなる場合は喘息(ぜんそく)かもしれません。
たんにはさまざまな色があります。黄色や緑色なら細菌などへの感染、さび色や茶色だと肺炎かもしれません。ピンク色で泡状のたんは心不全が疑われます。特に赤く血が混じっている場合はすぐに病院に行きましょう。1日に150ml以上のたんが出る場合や、腐敗臭を伴う場合は病気である可能性が高いです。
タバコ肺なら禁煙を 怖い間質性肺炎
すぐに受診すべき危険なサインを挙げます。じっとしていても息苦しい、急に体重が増減する、咳が長く続くといった症状です。特に、急な体重増加、横になると息苦しい、足にむくみが出るといった症状は心不全でよく見られるサインです。
息切れの主な原因には、喘息、COPD(慢性閉塞(へいそく)性肺疾患)、間質性肺炎、肺がん、肺炎・結核、心不全などがあります。
咳が続き、気管支がヒューヒューと鳴るなど喘息かなと思ったら、まず近くの病院を訪ねてください。COPDはいわゆる「タバコ肺」で、最大の原因は喫煙です。主に40歳以上の喫煙経験者にみられ、咳やたん、息切れが続きます。身近にいれば禁煙を勧めてください。喘息やCOPDは、適切な吸入治療で症状を大きく改善できることがあります。
間質性肺炎は、肺の間質に炎症や線維化が起こる病気の総称で、肺が硬くなる肺線維症も含まれます。肺がんは治療の進歩で生存率が改善しましたが、特発性肺線維症は今も予後の厳しい病気です。新薬もありますが、正確な診断と副作用管理が必要です。肺がんも含め大学病院などの専門医療機関を受診しましょう。
すぐに受診すべき危険なサインについて解説する星野氏
心不全のサインも 早期発見・治療が肝心
心不全は高齢者に多い病気で、2030年には罹患(りかん)者が130万人に達すると予測されています。塩分を取り過ぎると体内に水分がたまり、心臓に負担がかかります。ただし、心不全の原因は塩分だけではなく、肺の病気によって心臓に負荷がかかることもあります。繰り返しますが、横になると息苦しくて夜間に目が覚めたり、足がむくんでいたりする人は心不全に要注意です。
今まで履けていた靴が入らなくなったら、それは足がむくんで大きくなったからです。また、両足を指でグーッと押し、へこみがすぐに戻らないむくみ(ピッティング浮腫(ふしゅ))があれば早く病院に行きましょう。心不全は若い人にも起こり、重症化すると命に関わる病気です。明日、明日と先延ばしにして良くなる病気ではありません。現在は治療薬が進歩し、早期治療で症状改善や重症化予防が期待できます。
熱心に講義に耳を傾ける参加者
自己チェックできる項目を挙げると、同年代と比較して歩くのが遅い、動くと息苦しい、階段の上りがきつい、咳が8週間以上も続く、たんに色や血が付いている、横になると息苦しくて夜間に目が覚める、足にむくみがある。これらの症状は体の危険サインです。とにかく大事なのは早期発見・早期治療。一つでも当てはまる症状があれば、遠慮せずかかりつけ医、呼吸器内科、循環器内科で診察を受けましょう。
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