高血圧が大病の非常に危険な因子であることはよく知られています。では、高血圧にならない、あるいは悪化させない方法は。久留米大医学部内科学講座心臓・血管内科部門の准教授で同大病院総合健診センター長の深水亜子氏の講座「毎日の習慣が血圧を変える〜あなたの血圧は大丈夫?〜」の中から塩分摂取に焦点を当てました。
※西日本新聞TNC文化サークル久留米教室の講座「脳活健康大学」を採録し、抜粋・構成
話を伺ったのは?
久留米大医学部内科学講座心臓・血管内科部門の准教授
同大病院総合健診センター長 深水亜子氏
久留米大医学部内科学講座心臓・血管内科部門の准教授の深水亜子氏
医学博士。1997年久留米大医学部卒、同大医学部内科学講座心臓・血管内科部門に入局。同講座で60年以上続く田主丸住民検診を基に疫学研究を行いながら、同大病院の循環病センターおよび総合健診センター人間ドック部門での診療を担っている。2025年4月から総合健診センター長。専門は循環器予防医学、疫学、生活習慣病。日本循環器学会専門医、日本高血圧学会専門医、人間ドック健診専門医、同指導医。
目次
心疾患、脳血管疾患に 血管性認知症にも関係
血圧は、心臓から拍出される血液量と、血液を運ぶ血管の硬さで決まります。上の血圧は心臓が収縮して血液を押し出す時、下の血圧は心臓が拡張して血液が返ってくる時に、いずれも血管にかかる圧力です。
診察室で測った時の正常血圧は120/80mmHg未満です。上下どちらかが140/90mmHg以上では高血圧です。家庭での測定では正常血圧は115/75mmHg未満で、135/85mmHg以上で高血圧となります。
血圧が高いだけでは症状はありません。しかし、高血圧は別名サイレントキラー、ひそかに忍び寄る「静かな殺人者」です。脳卒中、心筋梗塞、腎臓疾患など血管の病気を引き起こします。日本人の65歳以上に多い死因は悪性新生物(がん)をトップに、心疾患、老衰、脳血管疾患、肺炎と続きます。心疾患と脳血管疾患は動脈硬化に由来し、高血圧が強く関係します。
また、中年期の高血圧が高年齢期の血管性認知症の発症リスクを上昇させると言われ、120〜139/80〜89mmHgのレベルで約3倍、140〜159/90〜99mmHgでは約5倍のリスクがあるという報告もあります。
まずは生活習慣改善 塩分の制限が重要
上の血圧を5mmHg下げると、心不全と脳卒中のリスクが13%、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患のリスクは8%、心血管病による死亡リスクは5%減ります。
では、高血圧にならないために、または高血圧だと分かったら、どんなことをするとよいでしょう。まずは生活習慣の改善です。その3本柱は食事、体重、運動です。
「まずは生活習慣の改善が大切です」と深水氏
食事で最も重要なのはナトリウム(塩分)の制限です。私たちの1日の塩分摂取量の目標値は、高血圧ではない人の場合、男性で7.5g未満、女性で6.5g未満、高血圧の人は6g未満です。しかし、日本人は1日平均で10gの塩分を取っています。
食塩すなわちナトリウムはいろいろな食品に入っています。日本人が塩分を取る食品の1位はしょうゆ、2位は漬物、3位はみそ汁です。さらに食卓塩、汁・つゆ、パン・麺、魚や肉の加工食品など。皆さんがこれらの食品の摂取量を意識して少しずつ減らすことが減塩の鍵になります。
改善への手がかりへ 自分の摂取量を知る
あなたの塩分摂取量を塩分チェックシートで調べてみましょう。1〜7番目の設問にあるのは高塩分食品で、この点数が高い人は該当する食品を1個ずつ減らしましょう。次の4項目は食行動。何が多いかを見て、改善すると塩分摂取量を減らすことができます。
その次の設問は家庭での味付けが外食と比べてどうか。外食の味付けを普通だと感じる人は、味覚が塩分過多に偏っている可能性があります。最後の設問は食事量。食べる量が多い人は、より塩分を薄くしましょう。
塩分を減らす工夫は、ほかにもあります。みそ汁は1日1杯。味見をせずに調味料をかけない。減塩タイプの調味料を使う。食卓に調味料を置かない。大量に出ないしょうゆ差しを使うなどです。
和食のおいしさは、だしにあります。だしのうまみを上手に使い、酢や香辛料のほか、ショウガ、ネギ、シソ、ニンニクなど香り豊かな野菜を使うことで味覚もより豊かに満たされると言われています。
野菜・果物を増やし、カリウムを摂取
ナトリウムを減らす一方で、カリウムを増やすのが理想です。カリウムは野菜、果物、低脂肪牛乳や乳製品に多く含まれます。1日の目標摂取量は野菜350g、果物200gです。
カリウムは、ナトリウムを尿中に排せつする作用があります。塩辛い食事の場合には、合わせてカリウムを多く取ること。例えばカレーライスやラーメンにサラダを付ける、コンビニの弁当にスティック野菜を加えるといった習慣を付けるといいかと思います。
ただし、腎臓の病気や糖尿病の人など、疾患により、カリウムや果物の摂取に注意が必要な場合もあります。治療中の病気がある人は、主治医の指示に従ってください。
このほか肉類などの動物性脂肪を控えて魚類の脂を増やす。適切な体重の維持。毎日の運動や身体活動を増やす。節酒と禁煙も大切です。
熱心に聞き入る参加者
皆さん、家庭血圧を測る習慣を作り、健康のバロメーターとしましょう。生活習慣を改善する目的は血圧を正常に保つことで血管を守り、心臓や脳・腎臓などさまざまな臓器の病気から身を守ることです。
家庭血圧が高い人は、減塩など生活習慣の改善に努め、それでも135/85mmHg以上が続く場合はかかりつけ医に相談してください。既に高血圧の治療中の人は、診察室血圧130/80mmHg未満(家庭血圧125/75mmHg未満)を降圧目標として管理していきましょう。
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