【脳トレ】コミュニケーションしながらiPad使い「みつおか式脳若トレーニング」

2025年には約800万人の「団塊の世代」が全て後期高齢者となる超高齢社会の中、パソコンやスマートフォンなど電子機器を使える高齢者も増えています。そこで全国的に注目されているのが、タブレット端末のiPad(アイパッド)を利用した認知症や介護の予防法「みつおか式脳若トレーニング」です。単に電子機器を使うのではなく、脳若トレーニングの「軸」にあるのは認知症予防に有効な他者とのコミュニケーション。開発したサムライト(福岡市早良区)の光岡眞里代表に同社の取り組みに込めた思いを聞きました。

話を伺ったのは?

脳若トレーニングのほかシニアで語り合うサロンなども展開するサムライト代表の光岡眞里氏
目次

サムライトが開発 仲間と語らいながら

講師や他の受講者と交流しながらトレーニングするのが特徴

講師と、そして一緒に受講する仲間たちと語り合いながら問題を解いていきます。そこに「みつおか式脳若トレーニング」のポイントがあります。「コミュニケーションありきです。脳トレのアプリと間違えられますが、アプリは1人で問題を解いていきます。そうではなくて、脳若トレーニングはコミュニケーションを取るために講師が使う教材です。脳トレアプリとは全く違うものです」とサムライトの光岡眞里代表は強調します。
光岡氏がパソコンのインストラクターを務めた後、起業してシニア向けパソコン教室を福岡県大野城市の公民館で開いたのが2003年。70〜90歳代の受講者らは、操作を覚えるたびに感動の声を上げたそうです。講座に通ううち、和気あいあいとしたコミュニティーも生まれました。その表情や声に「これは介護予防になっている」と実感したといいます。
10年にタブレット端末・iPadが発売されました。マウスを使うパソコンに比べ、画面に指で触れるタブレット端末はシニアにも操作しやすい。その利点と、おのずと形成されるコミュニティーを生かした介護予防はできないか―。認知症や介護の予防について学び、自らカリキュラムを作り上げました。

自治体、医療、介護 自動車教習所でも

「新しいことに挑戦できる人は元気で長生きできています 」と話す光岡眞里さん

それから15年目の現在、展開は全国に広がっています。トレーニングの教室「脳若ステーション」のほか、このカリキュラムを実施した自治体は140を超えています。医療や介護の現場、さらには千葉県や大阪府の自動車教習所でも取り入れられました。高齢ドライバーの免許更新時に義務付けられている認知機能検査や講習への〝準備〞のためです。
脳若トレーニングの普及と並行して、新たな展開も進行中です。LINE(ライン)を利用した「脳若365」やシニアが語り合うオンラインサロン「通いの場」を発信。元気な高齢者を社会貢献へと導く方策も模索しています。
精力的な取り組みのベースに、90歳になっても電子機器を使いこなせた母の生き生きとした姿があるといいます。「何百人もの高齢者と接してきましたが、やはり新しいことに挑戦できる人は元気で長生きできています」。脳若トレーニングは、そうした挑戦を提供するツールでもあるのです。

健康格差どうする?難題解決に取り組む

「この問題どう?」言葉を交わしながら解いていく

一方で「もしかしたら、私たちが健康格差を広げているのかもしれない」と自問します。「受講生から『人生が変わった』『おかげで長生きできている』といった声も聞きますが、では講座に来られない人はどうするの、と」。受講しているのは、そもそも介護や認知症の予防に対する意識の高い人々。だが、そうでない人を取り残したくはない。そんな難しい課題をどうクリアするのか。
「まずは意欲や関心がある方が集まるコミュニティーを育て、そこから輪を広げていってほしい。私たちもぶれずに、筋が通ったことを一貫して発信し続けなければならないと自覚しています」
光岡氏は剣道特待生として大学に進学し、全日本学生選手権にも出場した剣士。「剣道を経験したからこそ、難しい事業でも粘り強くやれているのではと思いますし、先輩方をリスペクトする姿勢は身に付いています。高齢者の皆さんは、日本の高度経済成長期に努力された方々ですから」。侍(サムライ)と、名字の光(ライト)を合わせてサムライト。難題に真っすぐに立ち向かう意気込みは、その社名にも表れています。

サムライトが開発「脳若トレーニング」

※HDS-R…長谷川式認知症スケール。30点満点で20点以下だと認知症の疑いが強い
※Apathy Scale…アパシースケール。無気力・無関心の度合い。点数が高いほど度合いが高い
※片脚立位保持時間…片脚立ちで姿勢を保てる時間
※SPPB…ショート・フィジカル・パフォーマンス・バッテリー。バランス、歩行、椅子立ち上がりの3テストの総合点
※TUG…タイムド・アップ・アンド・ゴー。椅子から立ち上がり、3m先の目印を折り返して再び椅子に座るまでの時間

脳若トレーニングが認知症予防に有効であることは科学的に実証されています。2018年から広島大との共同研究の末、従来の脳若トレーニングに運動(脳若バランス運動)も組み込んだカリキュラムを開発。受講者は認知機能、身体機能とも改善したことを19、20年の日本予防理学療法学会学術大会で発表しました。
13年には福岡県粕屋町の協力を得て、町民100人を対象に実証実験。受講の前後に集団式松井単語記憶テストで測定した結果、記憶力の維持・向上が認められました。この結果は日本応用老年学会や、新潟リハビリテーション大の若松直樹准教授(当時)とともに日本認知症予防学会で発表しました。
このほかにも九州大との共同研究で、トレーニング問題の効果を高める研究などを行いました。

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この記事を書いた人

脳活、運動、食事、睡眠、社会参加、脳トレなどの普及・啓発活動による健康寿命の延伸・認知症予防の実現を目指す「脳活新聞」

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