「最近、聞き返すことが増えた」「家族にテレビの音が大きいと言われる」。こうした変化は、年齢とともに起こる聞こえの衰え(加齢性難聴)のサインかもしれません。加齢性難聴はゆっくり進むため、本人が気づきにくいのが特徴です。この記事では、聞こえの変化に気づくポイントと、認知症との関係で分かっていることを紹介します。補聴器を考える前に知っておきたい注意点もまとめました。気になるときは、まず耳鼻咽喉科で相談するのが第一歩です。
目次
加齢による難聴は「高い音」から進む
加齢性難聴は、高い音から聞こえにくくなるのが特徴です。厚生労働省の補助事業で作られた自治体向けの手引き(2024年3月)は、その影響を説明しています。高い音が聞こえにくくなると、カ行・サ行・タ行・ハ行の聞き間違いが増えるそうです。
手引きによると、早口の話や、周りがうるさい場所での会話も聞き取りにくくなります。音がどこから聞こえるのか分かりにくくなることもあるそうです。
変化はゆっくり進むため、本人は「相手の話し方が悪い」と感じていることもあります。家族や周りの人が先に気づくことも少なくありません。
こんな場面が増えたら、聞こえを確かめるきっかけに
写真はイメージです
次のような場面が増えていないか、振り返ってみてください。
- 会話の途中で、聞き返すことが多くなった
- 聞き取れなかった言葉を、推測で補うことがある
- 電子レンジやドアのチャイムの音に気づきにくい
- 家族から「テレビやラジオの音が大きい」と言われる
- 大勢が集まる場や騒がしい場所で、相手の声が聞き取りにくい
これらは、例えば北海道帯広市が高齢の方向けに公開している「きこえのチェックリスト」(2025年8月)の項目をもとにしています。当てはまるものがあっても、すぐに難聴と決まるわけではありません。気になる場合は、耳鼻咽喉科で聴力の検査を受けてみましょう。
難聴と認知症の関係は、どこまで分かっている?
難聴は、認知症になりやすさと関連する要因の一つとして注目されています。英医学誌ランセットの専門家委員会は2024年の報告で、対策によって見直せる認知症の危険因子を14項目挙げました。その中に難聴が含まれています。
一方で、難聴が認知症の「原因」になるのかについては、研究が続いています。厚生労働省の資料(2025年3月)によると、難聴と認知症の因果関係は、国立長寿医療研究センターが検討を続けている段階です。
聞こえにくい状態が続くと、会話がおっくうになり、人と話す機会が減ることがあります。「年のせい」とあきらめず、早めに相談しておくと安心です。
難聴と認知症の関係は、久留米大学医学部の専門医が解説した【脳活健康大学】難聴は認知症の要因に 補聴器でリスク回避をでも詳しく紹介しています。
まずは耳鼻咽喉科へ 「補聴器相談医」とは
聞こえにくさを感じたら、最初に耳鼻咽喉科を受診しましょう。聞こえにくさの原因は加齢だけとは限らず、治療で聞こえが回復する病気もあるためです。
補聴器が必要かどうかを相談したい場合は、「補聴器相談医」がいる医療機関が目安になります。補聴器相談医は、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会が定める講習を受け、学会から委嘱された耳鼻咽喉科の医師です。
学会のホームページでは、都道府県ごとに補聴器相談医のリストを公開しています。福岡県内の医療機関も掲載されています(2026年10月時点)。
補聴器を考えるときの注意点
出典:消費者庁、福岡市消費生活センターの資料を基に脳活新聞WEB編集部作成
補聴器は「管理医療機器」にあたります。耳の状態や聴力に合わせた細かい調整が欠かせません。消費者庁と福岡市消費生活センターは、次のような点に注意するよう呼びかけています。
- 購入前に、耳鼻咽喉科の医師に相談する
- 「認定補聴器技能者」など、専門の知識を持つ人に調整してもらう
- 貸し出しサービスなどを利用し、購入前に使い心地を確かめる
- 慣れるまで時間がかかるため、少しずつ音量を上げながら使い続ける
- 店舗での購入や通信販売には、原則としてクーリング・オフが適用されない
福岡市消費生活センターは、慣らしのために最低3か月程度は装着を続けることが求められると説明しています。購入後も、調整や点検を続けることが大切です。
また、音を全体的に大きくする「集音器」は、補聴器とは別のものです。目的に合うかを確かめてから選ぶよう、同センターは助言しています。
家族が付き添うと安心
聞こえにくさがあると、店での説明や契約の内容を聞き取りにくいこともあります。消費者庁は、周りの人の支えが大切だとしています。受診や購入の相談には、できるだけ家族が付き添うとよいでしょう。
困ったときは、福岡市消費生活センター(相談専用電話092-781-0999)などの消費生活相談窓口に相談できます。
家族ができる、会話のちょっとした工夫
写真はイメージです
聞こえにくさがある人との会話では、話し方を少し変えるだけで伝わりやすくなることがあります。
- 正面から顔を見て、口元が見えるように話す
- 大声よりも、ゆっくり、はっきり話す
- テレビを消すなど、静かな場所で話す
- 伝わらないときは、別の言葉に言い換える
「聞こえない」ことを責めず、一緒に対策を考える姿勢が大切です。
よくある質問
Q. 補聴器と集音器は、どう違いますか?
A. 補聴器は管理医療機器にあたり、一人一人の聴力に合わせて調整して使います。集音器は、周りの音を全体的に大きくするもので、補聴器とは異なります。どちらが合うかは、耳鼻咽喉科で相談してから決めると安心です。
Q. 補聴器を買えば、すぐに聞こえるようになりますか?
A. 慣れるまでには時間がかかります。福岡市消費生活センターは、音量を少しずつ上げながら、最低3か月程度は装着を続けることが必要だとしています。合わないと感じたら、購入した店で調整を相談しましょう。
Q. 急に片方の耳が聞こえにくくなりました。様子を見てもよいですか?
A. 急な聞こえの変化は、加齢とは別の原因によることもあります。様子を見ず、早めに耳鼻咽喉科を受診してください。
まとめ
- 加齢性難聴は高い音から進み、本人が気づきにくい
- 聞き返しやテレビの音量など、日常の変化が気づきのきっかけになる
- まずは耳鼻咽喉科(補聴器相談医)へ。補聴器は調整と慣らしが大切
聞こえを保つことは、人との会話を楽しむことにつながります。気になる変化があれば、かかりつけ医や耳鼻咽喉科に相談してみてください。会話の合間には、頭の体操もどうぞ。今日の脳トレに挑戦してみませんか。
毎朝の脳トレをLINEでお届けしています。
参考資料
※この記事の内容は2026年10月時点の情報です。
文:脳活新聞WEB編集部(西日本新聞社)