寺社巡りへの「行きがい」がアップし、それが「生きがい」へとなるように―。そんな願いを込めて、脳活新聞は「九州の神社仏閣巡りガイド IKIGAI」(無料)を発行しました。いにしえから日本の玄関口としての役割を果たしてきた九州には、その歴史を背景とした神仏の伝説や史実が息づいています。そこで九州産業大国際文化学部日本文化学科の須永敬(すながたかし)教授(歴史民俗資料学・博士)に、この地ならではの特徴や寺社巡りのより深い楽しみ方を聞きました。
話を伺ったのは?
九州産業大国際文化学部日本文化学科
須永敬教授
九州産業大国際文化学部日本文化学科の須永敬教授
1972年生まれ、神奈川県出身。九州産業大教授のほか、第34期日本民俗学会理事・評議員、日本山岳修験学会理事、地方史研究協議会委員などを務める。福岡、大分両県や福岡市、糸島市、宗像市をはじめ九州各地の歴史民俗調査や資料収集、史料編さんに委員として携わる。「九州の山岳霊場」「道教文化と日本―陰陽道・神道・修験道―」「だから地方史研究はやめられない(シリーズ地方史はおもしろい07)」など著書多数。
目次
アジアとのつながり
九州はアジアにつながる日本の玄関口。史実はもちろん、アジアとの交流から派生した縁起・伝承が寺社に色濃く残されています。
福岡には神功皇后伝説が根付いています。皇后とその夫の仲哀天皇を祀(まつ)った香椎宮、三韓出兵の無事と成功を祈願した志賀海神社、帰国後に八幡神となる息子の応神天皇を出産した宇美八幡宮、その胎盤を納めた筥崎宮などなど。その伝説は非常にストーリー性を持ち、神社同士のつながりも見えます。
神功皇后ゆかりの香椎宮(福岡市)の御神木「綾杉」
渡来聖人の伝説が多いのも九州の特徴です。外来神を祀る、あるいは外国からやって来た僧が山を開いたという伝説・伝承を、これほど持つ地域はほかにないでしょう。
例えば英彦山神社は北魏の僧・善正が開山したとされています。香春岳の香春神社に祀られるのは新羅(しらぎ)の神。首羅山にも百済(くだら)から来た神が祀られています。また、雷山は清賀上人というインドの僧が開山したとされます。
寺社に残る交流の跡
史実としても、間違いなく仏教伝来の地が九州です。平安時代に最澄や空海は九州から命懸けで唐へ修行の旅に出ました。経典などを持ち帰ってきたのも九州。それに関する伝説がいくつも残り、縁起などにも記されています。さらに時代が下ると、南宋から戻ってきた栄西が日本最初の禅寺である聖福寺を博多に開いたりしました。
層の厚い交易の痕跡も、寺社に物証として残されています。宋風獅子という日本の狛犬(こまいぬ)のような獅子像が、観世音寺や飯盛神社、若杉山の太祖神社など九州に多く残っています。博多の周辺、平戸、鹿児島など九州の西海岸に分布している薩摩塔も、他の地域にはない中国渡来の石造物です。
また、長崎には唐寺という華僑のための四つの寺院(興福寺、福済寺、崇福寺、聖福寺)があります。到着した貿易商たちは、航海の無事を守護してくれた媽祖(まそ)像を船から下ろして唐寺に預けます。そして帰る時に再び船に戻すのです。現在の長崎ランタンフェスティバルは、それを模しています。
九州ならではの特徴や寺社巡りのより深い楽しみ方について話す須永教授
ストーリーを追う
英彦山は修験道における日本三大霊山の一つでした。信仰圏は九州一円から壱岐・対馬、山口、琉球と実に広大で、宝満山、求菩提山、檜原山など、英彦山と深い関係にある霊山が多く残っています。近世まで修験寺院だった英彦山霊仙寺は、近代に入ると神道化して神社(現・英彦山神社)となりましたが、今なお地域の人たちに信仰され続けています。
こうしたストーリーを追う、またはテーマを設けて寺社を巡るのも面白いのではないかと思います。ほかにも菅原道真のたどった道、佐賀であれば松浦佐用姫伝説、大分の宇佐神宮や六郷満山に見られる神仏習合、熊本から広がる阿蘇信仰など魅力的なストーリーやテーマが豊富です。
六郷満山の中核寺院だった旧千燈寺(大分県国東市)の史跡に残る仁王像
祭り・行事の日に
出かけるならば、神社の祭り、寺院の行事の日に合わせることをお勧めします。普段の寺社もいいものですが、祭りや行事にはその寺社が持つ由緒や信仰が最も発現され、地域の歴史や文化も凝縮されているからです。
九州は祭りが非常に多い地域です。三日恵比須に十日戎、御田植祭、綱引き、山笠などの祇園祭、くんち、宮座、神幸行事など、年間を通してどこかで何かの祭りが行われています。
その日程は各寺社や自治体、観光関連団体などのホームページで公開されていますし、紹介本も発行されています。一緒に縁起も調べると、いろいろな寺社同士の関係性も見えてきます。これらを予習してから出かけると、より楽しめることでしょう。
諏訪神社(長崎市)の秋季大祭「長崎くんち」
野原八幡宮(熊本県荒尾市)の「御田植祭」
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